Environment Thing

建築廃材の行方と今後のあり方。リサイクルで循環させる。

 

近代の科学技術の進歩や経済発展の飛躍により、建設産業も大いに発展しました。それにより、我々人間は豊かな生活を送ることができるようになりましたが、一方で、建築行為が無自覚なままなされた結果、環境や生態系に対して地形の形質変更や種の多様性の減少、廃棄物の産出、二酸化炭素やフロン等の地球温暖化ガスの増大等々、自然環境に負荷を増大させている現実に直面していることも事実です。
今回は、そのような負荷を如何に軽減できる形で建築していかねばらなないのか、その重要性と私たちに課されている課題を考えていきます。

 

 

☑ 安定型と管理型の廃棄物処分場

ごみ処分場は、大きく2つの分類に分けられていますが、一つは、ガラスや陶器のように投棄しても地中を汚染する心配のないゴミ用の安定型であり、もう一つは、化学物質が含まれていて地中汚染の心配のあるゴミ用の管理型とがあります。
管理型のゴミ処分場は、鋼製矢板やコンクリート等で周壁も底も覆われて、雨水で汚染物資が地中汚染をしないようにしてありますが、それでも、管理型の処分場は周辺住民の反対も強く、また建設費用もかさむ為、全国的に不足している状態です。

 

 

☑ ゴミの大半を占める建設廃材

管理型の処分場で大半を占めるゴミが建設廃材です。しかもその多くを占めるのが新建材です。その中でも管理型に分類されてる、石膏を紙で挟んだ石膏ボードは、殆どの建築で壁や天井に大量に使用されている材料ですが、使用されている紙が再生紙のため、その再生紙に染み込んでいるインクが土中に捨てると地中汚染になるので、管理型に分類されています。
石膏と紙は、水と熱による石膏の化学変化で密着している為、はがすことが困難なため一緒に投棄せざるを得ない状況となっています。
最近では、建築業界でも少しずつリサイクル製品が流行りになってきて、個人レベルでも活動が目立つようになってきました。

 

 ☑ リビルディングセンター

長野県諏訪市にあるリビルディングセンターは、「世の中に見捨てられたものに価値を見出し、もう一度世の中に送りだし、次の世代につないでいく」という理念の下、実現解体される建物、不要になって処分されると考えられている古い建物、古物や古材、建具などをレスキューし、新たな商品として販売してます。

例えば、泥だらけだった木材を、洗い、磨き、1枚の美しい板に変身させ、最終的にはお洒落なテーブルとして販売していたり、椅子やアイアンテーブル、お茶箱、お皿、たんすなど様々なものがレスキューされ、安価で売られています。
木材は、ベニヤなどの合板ではなく無垢のものが販売されており、例えば今はもうあまり使われない手法で製材された荒々しい表情の板材や、養蚕で使われていた道具、工場で使われていた鉄の塊なども販売されています。
当時の用途がわかるものもあれば、わからないものもあり、この時代での使いかたや楽しみかたを各自購入者が提案できるようなものもあります。
カフェにある大きな窓の外は工房になっているので、珈琲を飲みながら古材が運ばれてくる様子や、古材が磨かれてまたその美しい表情を見せてくれる瞬間、家具になっていく景色などが見れるのも、このレスキューセンターの見所です。

 

☑ RISE & WIN Brewing Co. BBQ & General Store

「生産から流通、販売の過程でなされる過剰な梱包や包装から解放されなければ、ゴミは減らない」という意識の基に、徳島県上勝町に「RISE & WIN Brewing Co. BBQ & General Store」が作られました。
量り売りやリサイクル商品などを扱っていた上勝百貨店が、ジェネラルストアとなったものですが、そのコンセプトは、下記3Rと呼ばれている3点です。
① 「リサイクル」
ゴミ集積所にあった建具や家具を再利用し、地産地消的な建築設計のアプローチを目指す。
② 「リデュース」
廃棄対象になる上勝特産の柚香の皮を香りづけにつかったクラフトビールの販売。
③ 「リユース」
繰り返し利用することに意味のあるリターナブルボトルデザインの使用

RISE & WIN Brewing Co. BBQ & General Storeでは、過剰な包装や不適切な量から来るゴミを出さない買い物の提案として、量り売りが行われています。お客が容器を持参し、ナッツやドライフルーツ、調味料、パスタやお米など、好きなものを必要な量だけ詰めて購入する仕組みになっています。
また、②の、ゼロ・ウェイストを目指すクラフトビール施設では、これまでは廃棄されていた果汁を絞ったあとの柚香の皮を香りづけに使用し、クラフトビールを作る過程でできた麦芽粕は、お菓子やグラノーラなどに再利用されてます。
正面のパッチワークファサードが印象的なテイスティングスタンドでは、作りたてのクラフトビールや、ジビエソーセージやベーコンなど、クラフトビールに合う一品も堪能することができる施設になっていて、もちろんクラフトビールも量り売りです。

 

☑ まとめ

近代科学は望ましい方向に進むと限りません。
建築業界でもリサイクルが話題になり始め、少しずつリサイクル製品が流行りになってきています。しかし中にはリサイクルしても廃棄処分は結局管理型処分場に捨てなければならないものもあり、それらを如何に再利用できるかは、ゴミを生み出した私たち自身に委ねられています。
すべての生産行為は、その生産過程と最終処理で如何に環境に負担がないかによって是非が問われ、それが、人類誕生からの文明の成熟度のバロメーターとなります。

 

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