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原子力発電と新エネルギー

2011年に3月に福島第一原発で事故が発生した際には、テレビや雑誌・ラジオ・インターネットなど、様々なメディアで原子力発電のデメリットや問題点が指摘されました。

原子力発電については以前でもご紹介しましたが、今回は、その原子力の基本原理、デメリットを踏まえ、それに代替できる新エネルギーのご紹介を致します。

☑ 原子力発電の基本原理

原子力発電は、火力発電のボイラーを原子炉に置き換えたものです。

火力発電は化石燃料を燃やして熱エネルギーを得て、これを使って水を沸かし、蒸気の力で蒸気タービンを回転させて電気を起こします。

これに対して原子力発電はウランを核分裂させて熱エネルギーを得て、水を沸かし蒸気の力で蒸気タービンを回転させて電気を起こします。

原子力は、少量の燃料で大きなエネルギーが取り出せます。このため原子力発電は、燃料の運搬、貯蔵の面でも優れています。

☑ 原子力発電のデメリット

原子力発電の最大のデメリット・問題点は「危険性」です。事故が起きた場合の危険性は他のどんな発電方法よりも極めて高いと言うことができます。

重大な事故で原子炉から放射性物質が放出されてしまう場合、大量の放射性物質が放出されます。原発周辺はもちろんのこと、国土全体や地球規模で土壌や海洋が汚染され、人間や動物も放射線を被曝することになります。

また、原発から高レベルの放射線が放出され続けている間は、事故の修復のために原発に近づくことが困難となり、修復までに長い時間を要する可能性もあります。

更には、原子力発電所では核分裂を利用するため、核兵器への転用というリスクが存在します。

☑ 新エネルギーとは

福島第一原発事故をきっかけに、様々な代替エネルギーが考案され始めましたが、その中に「新エネルギー」と呼ばれるものがあります。

新エネルギーとは、自然のプロセス由来で絶えず補給される太陽、風力、地熱、水力等から生成される「再生可能エネルギー」のうち、技術的には導入段階にあるものの、コストが高いため、その普及に支援を必要とするものを指します。

☑ 新エネルギーの種類

●太陽光発電

新エネルギーに分類されるエネルギーの中で、最も現実味があり有望視されているのが太陽光発電です。太陽光発電とは、半導体の一種で出来た太陽電池を用いて太陽光エネルギーをそのまま電力に変換する発電方式で、ソーラーパネルと呼ばれる板を太陽光がよく当たる場所に敷き、そこに太陽光を当たることで発電を行います。

太陽光発電は太陽光という無限に近いエネルギーを利用しており、石油や石炭などのように枯渇の心配がありません。また、ソーラーパネルに太陽光を当てるだけなので発電時にCO2を排出せず、環境負荷が極めて少ないクリーンエネルギーです。地球温暖化などの環境問題に対して決定的な有効性を持つ発電技術であるとして、現在世界規模で大きな注目を集めており普及が進んでいます。

太陽光の莫大なエネルギー量はあらゆる研究で証明されており、ゴビ砂漠にソーラーパネルを敷き詰めて太陽光発電を行うと、全世界の電力需要がまかなえるという試算もあります。

●太陽熱発電

太陽熱を利用して発電を行うのが太陽熱発電ですが、前述の太陽光発電との大きな違いは、発電方法が異なることです。

太陽光発電は光をソーラーパネルに当てることによって電力を発生させる技術ですが、太陽熱発電は集熱装置によって内部の水を温め、発生した水蒸気によってタービンを回し、発電を行います。熱によって水蒸気を発生させ、その力でタービンを回すというのは火力や原子力でも全く同じです。その熱源が太陽熱であるところが他の発電方法と大きく異なる点です。

太陽光発電は、まだまだ開発途上の段階にあり太陽エネルギーの10%程度しか利用できていないのに対し、太陽熱利用は熱を他のエネルギーに変換することなくそのまま利用するためエネルギー効率が良く、何と太陽光のうち40%以上ものエネルギーが利用可能です。また、太陽熱発電は、CO2を全く排出させないため半永久的に利用可能な新エネルギーです。

●廃棄物発電

家庭などから廃棄されたごみは、焼却処分されるのが一般的です。その時に得られる火力はこれまであまり有効利用されてこなかったのが実状で、この火力を発電に利用するために考案された仕組みが廃棄物発電です。

有効利用する以前からごみは焼却処分されていたわけですから新たなCO2排出がないことと、廃棄物を燃料とするため新たに石油や石炭などの燃料を消費しないため、新エネルギーとして定義されています。

数多くある新エネルギーにはそれぞれの特徴があるのですが、廃棄物発電には電力の安定供給に大きな強みを持っているという利点があります。

他の新エネルギーとして利用されている太陽光発電や風力発電などは天候の影響を受けやすく、単体では電力の安定供給に課題があります。しかし、廃棄物発電の場合は燃料供給において天候の影響を受けません。

さらに、発電時に放出された廃熱を利用することで、電気だけではなく温水や蒸気も供給するコージェネレーションシステムを構築し、さらに利用効率を向上させることも可能です。

●潮力発電

海が満潮になっている時は海水が多くなり、干潮になると海水が少なくなります。これは地球の自転や月の引力が作用し、大量の海水が移動することによって起こる自然現象です。これだけ大量の海水が移動するということは、その力を動力源とすれば発電にいかせるのではないかという発想から考案されたのが潮力発電です。潮汐発電とも言います。

河川にダムを作り、高低差によって発電を行うのが水力発電なので、この潮力発電は高低差の少ない水力発電であると言い換えることも出来ます。

自然の力を利用するため、資源量は無限にあり、発電時のCO2排出はありません。

他の新エネルギーの中には太陽光発電や風力発電のように天候の影響を受けやすく、発電量の目算が立てにくいものがありますが、この潮力発電については潮の干満において正確な予測が可能であるため、電力供給の計画が立てやすいというメリットがあります。

☑ まとめ

自然のエネルギーを利用した太陽光発電等の新エネルギーは、無尽蔵でクリーンという大きなメリットをもっていますが、半面、エネルギー密度が低く、まとまった電力を得るには広大な面積を要すること、天候など自然条件に左右され、安定性に欠けるなどの問題点も抱えています。

エネルギー密度やコストなど、課題はありますが、将来的には、それぞれの特徴を生かした分散型電源としての普及が期待されます。

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