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火力発電のまとめ

CO2の排出量を減らし、環境に負荷をかけない社会をつくるさまざまな取り組みが、世界中で進められています。電力も例外ではありません。
そんな中で、石炭火力発電は、CO2削減の観点から投資を控え始めた国がある一方、新興国ではさらなる活用が求められている状況にあります。
そこで今回は、火力発電について纏めた記事をご紹介します。

 

☑ 火力発電のしくみ

火力発電の基本的な仕組みは、燃料を燃やしてお湯を沸かし、その蒸気の力で蒸気タービンを回転させて電力を発生させます。
家庭のコンロでお湯を沸かす場合、やかんの口が小さければ小さいほど、湯気が勢いよく飛び出します。この「湯気の力(=圧力)」を使って風車を回すイメージです。

蒸気タービンを回転させた後の蒸気は、復水器で冷やされて水に戻り、またボイラー内に送られて蒸気へと変わるという動きをくり返します。
復水器の水を冷やすために大量の水が必要なため、火力発電所は比較的海に近い場所に設置されています。
火力発電は、燃料の量を変えることで発電量を調整することができますので、季節や時間帯によって変動する電力消費に対応して発電する役割を担っています。

 

☑ 火力発電の種類

●汽力発電
ボイラーなどで発生した蒸気によって蒸気タービンを回して発電する方式。火力発電のなかで、主力となっている発電方式です。
●内燃発電
ディーゼルエンジンなどの内燃機関で発電する方式です。離島などの小規模発電で利用されます。
●ガスタービン
発電高温の燃焼ガスを発生させ、そのエネルギーによってガスタービンを回す方式です。
●コンバインドサイクル発電
ガスタービンと蒸気タービンを組み合わせて、熱エネルギーを効率よく利用する発電方式です。運転・停止が短時間で容易にでき、需要の変化に対応した運転ができます。発電効率が良いので環境面からも注目され、積極的に取り組まれている方式です。

 

☑ エネルギー資源による分類

火力発電では、燃料として石油、石炭、天然ガスなどが使われます。
石油や石炭などのエネルギー資源には限りがあるため、エネルギー資源に乏しい日本では、下記に挙げるような様々な発電用燃料を組み合わせることで、エネルギー資源の安定確保に努めています。

●石油火力
燃料単価が高く、国際情勢などにより燃料価格が変動しやすいのがデメリットです。
●LNG火力、その他ガス火力
石油・石炭に比べCO2の排出量が少ない発電方式です。燃料単価は石油より安いのですが、石炭と比べると割高となります。
●石炭火力
石油に比べ埋蔵量が豊富で単価も安いのがメリットですが、その反面、環境保全対策が特に必要な発電方式です。

火力発電に使われる化石燃料には、限りがあります。1970年代のオイルショック時には、「石油はあと30年程度でなくなる」とも言われました。ですが不思議なことに、現在でも「石油はあと40年以上掘削できる」と言われています。
可採埋蔵量とは、石油の掘削技術が年々向上しており、「現在の技術を用いれば」あと40年以上の掘削が可能という意味です。
しかし、この年数を眺めて安心することはできません。エネルギー資源に乏しい日本では、燃料となる石油・天然ガス・石炭のほとんどを、輸入に頼っているからです。
特に石油は中東地域に偏在しており、湾岸戦争やイラク戦争といった国際紛争時には必要量を確保することが困難となるため、常に世界情勢に気を配り、輸送ルートの確保など国を挙げた努力を行っています。
また、この先、石油の可採埋蔵量が増えたとしても、限りあるエネルギー資源ということには変わりありませんし、燃やせばCO2が発生します。
そのため「同じ量の燃料からより多くの電力を発生させる」「CO2をできる限り減らす」といった努力が必要です。

☑ 「Liquefied Natural Gas(液化天然ガス)」

LNGの正式名称は「Liquefied Natural Gas(液化天然ガス)」で、メタンを主成分とした天然ガスを-162℃に冷却した液体です。超低温で無色透明、匂いもほとんどありません。
油田やガス田から産出される天然ガスは"ガス状"ですが、これを沸点(-161.5℃)以下に冷却して液化させています。
周囲を海に囲まれた日本では、産出地からパイプラインを引くことが難しいため、燃料の輸送は船が担います。
天然ガスは液化することで体積を1/600程度にまでできるため、輸送時や保管時の効率を飛躍的に高められるというわけです。
こうして液体として運ばれてきた天然ガスを常温の海水で温めることで気化させ、燃料として利用しています。
LNGは火力発電の燃料としてさまざまなメリットがありますが、環境面では、火力発電燃料の中で、燃焼時のCO2排出量が最も少ないのがLNGです。
石炭と比較した排出量はなんと約6割です。また窒素酸化物(NOx)は約4割、硫黄酸化物(SOx)は排出ゼロで、ばいじんもほとんど発生しないことからクリーンな燃料とも言われています。
また、天然ガスは埋蔵量が豊富で、世界各地で産出されていることから、安定的に入手できることも重要なメリットです。
環境面のメリットは、火力発電所を消費地である都市の近郊に建設でき、送電ロスを軽減できるという利点にもつながっています。

 

☑ 火力発電のメリット

電力需要量に応じて発電量を比較的簡単に調整することができるため、電力需要のピーク時には出力を高め、逆に需要が少ないときには出力を下げるなどといったように、とても便利に利用することができるのが主なメリットです。他にも、下記のようなメリットが挙げられます。
●他の発電方法より発電効率が良い
●コンバインドサイクル発電など、以前よりも発電効率が更に良い火力発電が誕生している
●燃料を調整することで発電量を容易に調整できる
●万が一事故が発生しても、局所的な被害に留まる

 

☑ 火力発電のデメリット

現代、地球温暖化が問題視されていますが、火力発電では多くの二酸化炭素を排出してしまうという問題点があります。
近年では技術の進歩により改善されてきていますが、それでもまだかなりの量を排出してしまっており、なかなか難しいところではあります。
その他挙げられるデメリットは下記の通りです。
●大量の化石燃料を必要とする
●円安になると収益が悪化する
●大気汚染の原因となり得る硫黄酸化物や窒素酸化物を排出する

 

☑ 推進派と反対派

どのようなモノやサービスにも、メリットとデメリット、推進派と反対派が存在しますが、火力発電関しては既に世界的に主力の発電方法として活用されていることもあり、新しく火力発電所を作ることに反対しているというケースは稀です。
ポイントとなってくるのはやはりデメリットの項目でしょう。地球温暖化に対する対策として「二酸化炭素の排出量削減」がよく謳われていますが、火力発電はどうしても火を使うため、全くゼロにするということは不可能なのです。
それでも近年の技術の進歩の成果もあり、新しい天然ガス(LNG)などを燃料として使うことによって、以前よりも二酸化炭素の排出量が少なくなるようになってきています。

 

☑ まとめ

火力発電では、メリットが多く挙げられ、これからもしばらくは火力発電が中心となっていくという流れは変わらないでしょうが、環境面においては、どうしても「排気ガス」が出てきてしまい、理想的なエネルギーとは言い難いでしょう。
まだまだ課題はあるとは言え、LNGなどの天然ガスなどを燃料とすることにより、更なる二酸化炭素排出量削減に期待したいとことです。

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