野菜しか食べないの!? ベジタリアンを知ろう。
最近よく耳にするベジタリアンですが、ベジタリアンにも色々な種類があり、その違いをご存知でしょうか?
一般的なベジタリアンの認識は、肉や魚を食べないということですが、卵・乳製品・ハチミツまでも口にしない人々もいます。
そこで、今回は、ベジタリアンについてわかりやすく説明します。
☑ ベジタリアンとは?
ベジタリアンという言葉は「健全な、新鮮な、元気のある」という意味のラテン語 'vegetus' に由来するもので、ベジタリアン (Vegetarian) という言葉は英国ベジタリアン協会発足の1847年に初めて使われました。
産業革命で有名なマンチェスターの聖書教会の会員によって、19世紀に肉や魚は食べずに卵や乳類の摂食は本人の選択により、穀物・野菜・豆類などの植物性食品を中心にした食生活を行なう運動が展開されました。これがいわゆる近代ベジタリアン運動の始まりです。
現在では、ベジタリアンの定義は流動的で、英国では畜肉を食べない人を広義なベジタリアンとする傾向があります。
☑ ベジタリアンの分類
ベジタリアンは「よく野菜ばかりを食べる人」と思われがちですが、実はそれだけではなく、種類もたくさんあります。
●ラクト・オボ・ベジタリアン
肉と魚を避ける種類の人々で、欧米のベジタリアンのほとんどが、このタイプです。
●ラクト・ベジタリアン
ラクトというのは乳製品という意味ですが、肉、魚、卵を避ける種類の人々で、乳製品とハチミツを摂るのが特徴的。
●オボ・ベジタリアン
オボというのは卵という意味ですが、肉や魚や蜂蜜を避ける種類の人々で、卵や乳製品を食べるベジタリアン。
●ペスコ・ベジタリアン
肉や卵や乳製品を避ける種類の人々です。魚は食べる食事法をします。
●ヴィーガン
鳥獣の肉、卵、魚介類およびそれらの副生成物(ラード、ヘット、ゼラチン、肉エキス、鰹節・鰯・エビなどの出汁、魚を殺傷して得た魚卵)が含まれるものを口にしない人々です。
厳格なヴィーガンは蜂蜜なども含む動物性の食品を一切摂らず、開発に動物実験を要した薬品や化粧品などの使用を避け、動物製品(皮革製品・シルク・ウール・真珠・珊瑚など)を身につけない者を指す場合もあります。
●ダイエタリーヴィーガン
ヴィーガンと同じく野菜主義ですが、食用以外は利用する人たちです。
日本のヴィーガンは食事だけなことが多いので、殆どはこちらのタイプでしょう。
●フルータリアン
「果物やナッツなど木になる実、木になる野菜」しか食べない人々です。
リンゴの実を収穫してもリンゴの木は死なないが、ニンジンは死んでしまう、といった考えです。
●ノン・ミート・イーター
肉だけを食べない種類の人々です。魚は健康に良いが、肉は体に悪いという考えです。
●ポゥヨゥ・ベジタリアン
基本何を食べてもいいが肉は鶏肉だけ食す人々で、ホワイト・ベジタリアンも同じ食事の仕方をします。
●セミベジタリアン(フレキシタリアン)
肉を出来るだけ避けようとする種類の人々です。
☑ なぜベジタリアンになるのか?
ベジタリアンになる理由は、大きく分けて3つあると考えられています。
●宗教的な理由
日本でも、厳格な仏教徒の人などは「不殺」の考えにのっとり、菜食主義を奨励していた時代があります。これは現在も、精進料理の形で残っています。
●健康上の問題
「野菜を食べることが体に良い」という考え方はよく知られています。野菜だけでの生活というのも様々な健康被害を及ぼすと考えられていますが、このような考え方から実践している人も多いです。
●環境などに関わる問題
現在、地球温暖化を進めると言われるガスの排出量の内の20パーセント程度が、畜産業によって生じていると言われています。また、畜産業を進める上で必要になる放牧で使われる土地というのは、地球全体の3割程度だというデータが出ています。
これらの観点から、ベジタリアンという生き方を選ぶ人がいるのです。
☑ 海外のベジタリアン状況
●アメリカ
ここ数年間でビーガン人口が6倍に増え、都市部においてはかなり多くのレストランにベジタリアン・ビーガンメニューが導入されています。
2009年の時点でビーガンを実践している人は、アメリカ全土でたった1%程度しかいませんでしたが、2013年の時点では2.5%に、2017年には6%まで増加し、人数にすると2,000万人近くのヴィーガン人口がいると推定されます。また、菜食実践者の約半数が35歳未満です。
●ドイツ
全人口の約10%がベジタリアンもしくはビーガンで、世界でも菜食人口割合はトップレベルです。首都ベルリンではさらに多く、15%前後と推定されています。
ベルリンでは、公表されているだけで400近い飲食店が菜食メニューを導入していて、「ビーガンが世界一住みやすい街」ランキングでも常にトップに君臨しています。
●イギリス
2017年現在のベジタリアン人口は全体の約3%、ビーガン人口は1%台とそれほど多くありませんが、2012年からの5年間で3.6倍増加し、現在は約54万人が菜食を実践しています。
●スイス
全体の人口は少ないですが、スイスも菜食人口の割合が大きく、ビーガンとベジタリアンを合わせた菜食人口は14%で、ヨーロッパでも特に多い地域となっています。
☑ 日本のベジタリアン状況
日本のベジタリアン率は4.7%、うちヴィーガン率は2.7%ほどです。
社会としても菜食実践者に対する理解は浸透しておらず、日本は先進国の中では、菜食として最も生活しにくい国の代表格です。
日本食には元々出汁などに魚が使ってあったり、肉のエキスや油などが料理に含まれていたりすることが多く、知らず知らずのうちに食べてしまっていることもあるでしょう。
実際に、日本でビーガン、ベジタリアンでいることが困難なので、日本にいる時は魚は食べる、ビーガンだけど日本では卵や乳製品は取る、日本にいる間はベジタリアンを辞めるという外国人もいます。
訪日外国人が増えつつある中、東京などの都心部では少しずつ、ベジタリアンやビーガン向けのレストランが増えてきていますが、地方に行くとまだまだ対応できていないのが現状です。
全国のホテルや飲食店、あるいは小売店がこうした外国人のニーズをより深く理解し、ベジタリアンやビーガンの人たちに食の選択肢を提供することがますます重要になってくるでしょう。
☑ まとめ
伝統的な和食、例えば、米飯を中心に具を野菜のみにした味噌汁、煮物、炒め物、もう一品は大豆を中心とした豆腐や納豆などの豆料理を食すれば、栄養バランスが取れた健康食・生活習慣病予防食になります。
このような伝統食は、実は立派なベジタリアン食です。食料自給率100%の米飯を中心とすれば、エコロジー的にも良いものになります。
日本ではまだまだ浸透が薄いベジタリアン生活ですが、几帳面すぎることなく、自分や家族に適した持続可能なスタイルで栄養バランスのとれたベジタリアン生活を楽しむのも一つの方法です。