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謎の多くは深海にあり

2016/11/26

 

世の中にはまだ解明されていない沢山の謎がありますが、中でも殆ど未知の状態となっているのが、海の底、深海です。
今回は、現段階で解明されている深海の謎の幾つかをご紹介します。

 

☑ 深海って何?

「深海」とは、一般的には深度200m以深の海中のことを指します。
地球の表面積の約半分を占めているのが、深海帯と呼ばれている水深4000~6000mの深海底の部分で、一番深いところでは約1万1000mにまで達しており、広い空間が広がっています。
海の平均深度は3729mであることから、海のほとんどが深海に属しているわけです。
人類が調査できる深海の範囲はわずか数%ですので、まだ海のほとんどの部分は謎に包まれているわけです。

 

☑ 深海の構成

人間が陸上で生態系を成り立たせているように、深海でも、独自の形態や生態の構成が成り立っています。
しかし、深海では、太陽光が届かず、人間の眼では数m先も確認できないほど暗黒の世界が広がっています。太陽光がないということは、光合成ができないことになり、シアノバクテリアなどの光合成が必要な微生物は、深くなるにつれて減少します。
また、超高水圧で、0℃近い水温で乏しいエネルギー源という相当過酷な環境なため、それに適応するための独自の海水純粋システムが機能しています。

 

☑ 陸地と深海の生態系の違い

浅海の海水と、深海の海水は交わることがないので、深海では深海で独自の生態系が形成されています。
生命力が強い微生物にとっても、光合成ができない深海というのは生きづらい環境となりますが、高熱・高濃度・高水圧といった特殊な環境でのみ生育できる、古細菌という原始的な細菌が増加していきます。これらの菌は、陸地には存在しません。

 

☑ 進化する深海の五感

深海は、殆ど光が届かない暗黒の世界ですが、上部深層まではかろうじて太陽の光は届くので、深海生物はこのわずかな光をとらえることができるよう、最適化されています。眼が異様に大きいことが、適応して進化の結果と言えるでしょう。
視覚がある程度制限されている分、嗅覚や反響音が一層活用されます。こうした五感をフル活用して、狩りや移動を可能としています。

 

☑ カウンターイルミネーション

深海1000m付近にいる魚は、上から降り注ぐ太陽の光により、下から見上げるとシルエットが浮かび上がってしまい、眼が発達している魚からは発見されてしまいます。
そこで、この層に生息する深海魚は、カウンターイルミネーションというテクニックを使います。これは、自らの腹部を発光させて、上から降り注ぐ太陽の光量と同レベルに調節し、シルエットを消すシステムです。
深海魚の多くは、このような発光機能を持ち備え、こうしたカモフラージュの他に獲物の誘導や視界の確保など、様々な形で活用しています。

 

 

☑ 海流速度、秒速数センチ

深海には風が存在しないので表層のような海流は存在しませんが、熱塩循環による非常に遅い速度の海流は存在します。しかし、移動速度は秒速数センチといわれていますので、ほぼ静止状態です。
この遅い速度と深海の性質上から、一度深海にもぐりこんだ海水が表層にもどってくるまでは、なんと2000年もの時間がかかるそうです。
ただ、基本的には、表層と深海の海水が混合することはなく、温度躍層を境に完全に分離されています。

 

☑ 深海8400メートルの境

深海8400mより下には魚はいないというミステリーがあります。なぜ、8400メートルという数字なのかは誰にもわからず、将来この境界線を突破した魚が見つかるかもしれませんが、今はところは、この深海8400メートルの謎について科学者たちによっていくつかの説が唱えられているだけです。

 

☑ まとめ

深海生物は、独自のメカニズムにより浅海生物とはかけ離れた異様な姿に見え、それは宇宙生物のようにも見えます。
宇宙も無限大に広い世界ですが、宇宙同様、あるいは宇宙以上に深海の謎は深く、現在解明されている深海の知識は全体の1%にも満たない、とも言われているほどです。
謎が残っていれば残っているほど、興味深いミステリーが広がっています。
深海に関する調査は、謎が多すぎて最近まで世界中でも殆ど調査が進められていませんでしたが、近年になってようやく調査が動きだし、日本にも、数は少ないですが、少数の大学で深海生物の研究が始められています。
将来、日本から、「深海学者」が誕生する日が来るかもしれませんね。

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