独自の文化を受け継いでいる不思議な国、バスク地方
2017/01/06
最近では美食の街として、注目を浴びてきている、スペインとフランスにまたがるバスク地方。スペイン語やフランス語とは異なるバスク語を持ち、またバスク独特の文化も持つ。
スペインといえば、 一年中強い日差しが降り注ぎ、乾燥した荒涼な大地というイメージがあるが、バスク地方はこのイメージを払拭する。「緑のスペイン」と呼ばれるだけあり、自然はとても豊かで、山水に恵まれた地域だ。
その自然の恩恵もあり、数多くのミシュランレストランを持つスペインの中でも、最も多くの星が輝くのが、このバスク地方だ。
バスク料理は、最近日本でもよく話題に取り上げられるようになっているが、バルに並べられている小さなパンに肉や魚、マッシュルームの野菜などが添えられたピンチョスも、バスクの名物料理の一つである。特に、スペイン北部のリゾート地となっている海岸に面した小さな街、サン・セバスチャンには、旧市街にこのバルが集中しており、週末ともなれば、多くのバスク人でバルが埋め尽くされる。
飲み物をバーテンダーに注文し、その後、カウンターに所狭しと並べられた色とりどりの多くの種類のピンチョスの中から、好きなピンチョスを自分で選んで勝手に食す。1つのバルで1つの飲み物と、1,2つのピンチョスを食べ、次のバルに行き、また1,2つピンチョスを食して、自分の好きなバルをはしごしていく、というのが、バスク人の飲み方だ。店員が注文した品を書き取って記録しているわけではなく、最後に、どの種類の飲み物とピンチョスを幾つ食べたかを自己申告してお会計をするシステムだ。清算は、お客との信頼関係で成り立っている。
日本でも、田舎に行くと無人販売所のような風景を見かけることがあるが、真面目、勤勉、繊細という一般的バスク人の気質は、なんとなく日本人と似ている。
バスクの王様は、昔ランチに一人で20匹ものチキンを食した、という噂もあるほどだ。王様の食事レシピがしっかりと記録に残っている、というのも、バスク人らしい。
サン・セバスチャンにある「ラ・コンチャ」という海は、「世界の真珠湾」とも言わるだけあり、まさに真珠を抜き取った形をしている。夜にライトアップされた街並みを、サン・セバスチャンが一望できるイゲルドの丘から眺めると、それはまさに海に真珠がちりばめられた光景そのものであり、バスクの絵葉書の代表ともなる。
バスク地方には、観光名所が多くあるわけではないが、小さい街を歩けば、何かしらのバスクらしさを感じたり、新たな発見ができる魅力的な場所だ。
豊かな自然、おいしいご飯、そして何よりも心温まる人との出会い、そんな旅こそ、形の無い自分だけの世界遺産を、そこに発見できるのではないか。